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ひきこもりを、社会の問題として考える

 2019年5月に川崎市で殺傷事件がありました。加害者はその後自殺しました。

 自ら命を絶った容疑者に対し「他人を巻き込まずに一人で死ね」という言葉がネットやテレビで飛び交いました。そのことについて、ほっとプラス代表理事藤田孝典さんが「1人で死ぬべきだ、という非難は控えて」という記事をネットで発信しました。ところがその記事に対する批判や反発の声は大きく、「個人の問題と社会の問題がつながっている」という考えることが多くの人にとって難しくなっていると感じました。

 この事件を社会としてどう受け止めればよいのか、3名の識者が新聞に意見を述べています。

 以下、新聞記事から引用します。(2019年6月14日朝日新聞耕論より)

藤田孝典氏

「日本で凶悪事件が起きると、当事者やその家族、行政への責任を求める風潮があります。しかし「私たちの社会が起こしてしまった」という視点で一人ひとりが事件の背景や何ができるかを考えることが、悲劇を繰り返さない一歩になるのではないでしょうか。」

小田嶋隆氏

「この国では今、差別的言辞で非難されるリスクより、正論を口に出したことで罵倒されるリスクのほうが大きくなっています。リンチに熱狂する群衆をたしなめると今度はその人間が標的になる、そんな気持ちの悪い国に変わる前兆を垣間見た気がしました。」

斎藤環氏

「特定の人々を偏見で排除するのではなく、社会の同じ一員として向き合う。たまたま困難な状況にある、まともな人というまなざしで見ることが、必要ではないでしょうか。ひきこもりについて語ることが社会をより豊かにする。そんな建設的な道筋もあるはずだと私は思います。」

 

 社会の問題は個人の問題であり、個人の問題はその社会の問題です。

 「自分が悪いから」「家族だけで何とかしないといけない」と考えるのではなく、孤立しないためにも、まず、外に出て相談するとチャンスを探していただくこと、社会はもっと相談窓口を増やし、継続的にご本人と家族をサポートするシステムを作っていかねばならないのだと、改めて思います。